近年、BtoB事業のマーケティングにおいてほぼスタンダードとなったマーケティングオートメーション(MA)の活用。日本でも国内外のMAツールの選択肢が出そろい、その中でも代名詞的な存在として導入が急増しているのが、セールスフォース・ドットコム社が提供するPardot(パードット)です。MAツールとしては世界No1のシェアを誇ります。
PardotのようなMAツールの導入に、ハードルを感じている人もいるかもしれませんので、本記事ではPardotについて基礎知識から特徴、機能までを解説します。
Pardotの導入を検討されている方や使い方に課題を感じている方も、ご一読ください。
Pardot(パードット)とは?
https://www.salesforce.com/jp/products/pardot/overview/
Pardot(パードット)は、セールスフォース・ドットコム社が提供する、世界No1シェアを誇るマーケティングオートメーション(MA)ツールです。
もともと米国で誕生し、買収によりセールスフォース社の傘下となりました。以降はSalesforceと統合的に使えるMAツールとして急速にシェアを伸ばしており、競合でもあるMarketo(マルケト)やHubSpot(ハブスポット)と並んでMAの代表的な製品として認知されています。
Pardotの特徴としては、営業・サポートの両面でSalesforceの恩恵が受けられることです。2017年以降は日本語のUIにも対応しており、海外発のサービスではありますが、導入・利用に支障がないといえるでしょう。
日本でも大手企業からSaaS事業を展開するスタートアップまで幅広く導入されており、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を担う有力なサービスのひとつになっています。
Pardot(パードット)の特徴とメリット
Pardotによってどんなメリットが得られるのでしょうか?大きく分けると以下の5つに集約されます。
- Salesforceとの連携
- 見込み客の抽出
- 潜在顧客の発掘
- ROI(投資収益率)の測定
- 営業との連携
1. Salesforceとの連携
CRMにSalesforceを導入している場合、Pardotと連携ができるので、以下のようなメリットがあります。
- Salesforceとのデータ連携ができる
- インターフェースも統合されているので操作がスムーズ
- Salesforceとセットでの導入支援・コンサルティングが受けられる
- Salesforceとセットで導入しやすい価格帯で、契約期間の一括管理ができる
このようにSalesforceとPardotを連携させることで、Pardotで実施できる施策の幅が広がります。Salesforceにログインせず、Pardotから指定できるアクションが増えます。SalesforeやPardotのどちらかのみ使用している方や、両方導入しているが連携していない方など、今後はぜひご活用ください。
2. 見込み客の抽出
Pardotでは、Webサイトへのトラフィックをスコアリングやグレーディングといった機能で可視化し、コミュニケーションの優先順位をつけることができます。一定の基準を満たせばインサイドセールスから架電の対象にすることもあれば、継続的なメール配信の対象として蓄積することも可能。より効果的なセールスが実現できるのです。
Webサイトにアクセスするユーザーのニーズは多岐にわたり、どんな課題を持っているかで閲覧するページは異なります。検討度合いによっては、短期間に複数回アクセスする可能性もあります。
見込み客抽出のシグナルとしては以下の通りです。これらに該当するトラフィックは高い配点でスコアリングされるのが一般的です。
- (商談確度の高い)特定の資料ダウンロードフォームから情報入力があった
- 価格やプラン紹介ページを複数回閲覧していた
- 短期間の間に複数回のアクセスがあった
- メールの開封率やクリック率が高い
これらを可視化することで精度の高い優先度付けが実現できます。
3. 潜在顧客の発掘
Pardotを利用することで、潜在的な顧客を発掘・蓄積することができます。「課題は感じているけどどうするか決めていない」「課題すら自覚していない」という状態のユーザーを、「今すぐ導入を検討したい」状態に育成、抽出する機能があるのです。
Pardotでは、以下のように顧客のWeb上での行動をトラッキングし、それに合わせた訴求をすることでユーザーの興味度合いを上げていきます。
- 記事を最後まで読了した→メール購読フォームを案内
- ページを何度も閲覧している→チャット形式で資料ダウンロードやセミナー案内を訴求
このように、サービスへの関心を高めながら次のアクションへ誘導することで潜在的な顧客を発掘、蓄積するのです。
4. ROI(投資収益率)の測定
Pardotでは、WebマーケティングにおけるLPや広告などキャンペーン単位でROIを測定できます。ROIとは「Return On Investment」、つまり「投資収益率」のことです。
Pardotでは次のようなことができます。
- セミナーごとに、かかった費用と見込み客獲得から効率を比較する
- 訴求内容違いのランディングページから資料ダウンロードへの貢献度を比較する
- 前年同月比で、マーケティングコストと効率性を比較したい
キャンペーンごとに予算をいくらかけて、いくつコンバージョンが取れたか、コンバージョン単価はいくらなのか、を集計することでROIの測定ができるのです。
従来はアクセス解析ツールや各種広告の管理画面、お問い合わせなどのコンバージョン数を集計してまとめる必要がありましたが、Pardotではこれらが簡単に集計できます。各種機能が1つに集約されたMAツールならではのメリットといえるでしょう。
5. 営業との連携
Pardotを活用すれば、マーケティングだけではなく、営業との連携が効果的に行えます。
Webサイトへのアクセスページ、滞在時間などの情報も営業部門に提供することができます。それによってマーケティング活動の成果を営業が知ることができ、顧客にとって効果的なアプローチが確認できます。
このように営業と連携をすることで、質の良い訴求や受注貢献の高いキャンペーンは何かが明確になり、営業活動にも貢献できるのです。
同じくSalesforce社が提供している顧客データベースを用いて営業活動を支援するアプリケーション「Sales Force Assistntシリーズ」については、こちらの記事もご覧ください。
「営業支援システム」と呼ばれているSales Force Automation(SFA)とは?〜formrunと連携しての使い方を紹介
Pardot(パードット)の主な機能
たくさんあるPardotの機能から、主要なものを紹介します。
Webトラッキング機能
インターネット上でのユーザーの行動記録を追跡・記録するWebトラッキング機能です。Pardotの計測タグを設置したサイト内のユーザー行動を把握できます。ドメインが異なる自社サイト、製品サイト、メディアサイト3つを一つに見立ててトラッキングすることも可能です。
この機能にはブラウザのcookie技術が使われており、フォームから個人や組織情報を入力をしたユーザーや、メール内のリンクをクリックしたユーザーであればどの人のアクセスかを特定できます。これら情報とcookieがひも付き、把握しやすくなったユーザーは「アクティブプロスペクト」とも呼ばれます。
この機能により、セミナー参加をフォームから申し込んだ人が、事前にどんな記事コンテンツやページを閲覧したかなどがわかるようになります。後述するスコアリングやナーチャリングのためにも必要となる、MAツールならではの機能です。
スコアリング機能
Webサイト内での行動や、属性情報をもとに点数を加算し評価する機能です。たとえば、
- Webサイトに一度だけ訪問した
- 複数ページを閲覧した
- サイトに複数回訪問した
- 「料金」ページを閲覧した
- 資料ダウンロードフォームに情報を入力した
のように、サービス導入検討に影響を及ぼす行動や属性から加算する点数を設定します。
これにより、スコアの高いユーザーほどサービス検討度が強い、という優先度をつけられるようになります。
このスコアが一定以上になったらインサイドセールスから架電する、セミナー参加誘致のメールを配信する、といったかたちでネクストアクション実行の基準として活用します。
グレーディング機能
スコアリング機能にも似ていますが、ユーザーの属性情報をもとにカテゴライズし、サービス導入と相性の良いユーザーを抽出する機能です。
業種や役職、部署、企業規模などの属性情報をもとに、自社サービスと相性の良い属性を優先して可視化します。
特に、特定の業種や規模の企業に導入されやすい製品・サービスを提供している場合に役立つ機能です。他にも、金額が高く、一定以上の役職でないと検討しづらいサービスにも有効です。
メールシナリオ設定機能
ビジネスシーンでもチャットやSNSでのコミュニケーションが浸透してきましたが、メールはBtoB領域ではまだまだ有効なチャネルです。
配信したメールへの反応をふまえて、次に配信するメールの内容や配信タイミングを設計するのがメールシナリオ機能です。
たとえば、資料ダウンロード時にメールアドレスを入力した人に翌日にお礼メールを配信、その中のリンクをクリックしたらセミナー告知のメール配信、というかたちでシナリオに合致した人を抽出します。ユーザーに価値あるコンテンツやコミュニケーションを届けながら検討度の高いユーザーを育成・抽出します。
このような施策を、コーヒーの抽出に見立てて「ドリップマーケティング」と呼ぶこともあります。
レポーティング機能
ユーザーのWebサイト上の行動をリアルタイムで把握できる機能です。今現在、サイトにどこからどれだけのアクセスがあってどのページを閲覧しているかがひと目でわかります。
その他にも、ROIを確認したり、キャンペーン単位でのレポート表示も可能で、広告やSEO、SNSなど様々な集客施策の効果測定ができます。
もちろん、Web解析のスタンダードであるGoogle Analyticsと併用して設置も可能です。
ナーチャリング機能
ナーチャリングはMAツールの特徴的な機能の一つで「リードナーチャリング」とも呼ばれる施策です。「ナーチャリング」は単一の機能というよりは、スコアリングやメールシナリオを組み合わせたコミュニケーションによりサービスの検討具合を上げていく機能および活動を指します。
ダイナミックコンテンツ
スコアリングデータなどをもとに、Webページやメールの文章を出し分ける機能です。
いわゆる「動的なページ」や「メール差し込み機能」をスコアリングデータで詳細にコントロールするイメージの機能です。これにより、
- ある特定のページを見た人だけに表示するコンテンツ
- 特定の属性の人だけに表示するメール文
- 来訪元の国情報によってメールの言語を切り替える
といったことができます。「マーケティングオートメーション」ならではの機能の1つです。
ランディングページ(LP)やフォーム作成
シンプルなランディングページ(LP)や情報入力のためのフォーム作成ができます。ただし、それぞれに特化したツールに比較すると特に表現力や使いやすさという点で不便を感じるかもしれません。実際に利用している企業でも使い慣れた他のCMSツールと併用するケースは多いようです。
Pardotの活用事例
マーケティング活動やセールス活動にPardotを活かしている企業は数多くあります。ここでは、どのような背景からPardotを利用して、どのような成果が現れたかを実例をもとに解説します。
NECマネジメントパートナーの事例
同社では積極的なMAの導入の必要に迫られていました。マーケティングの全体プロセスをカバーできていないという状態でした。そこで、Webサイト上での見込み客の行動把握、スコアリング、ランディングページの改善などをするためにPardotを導入。
Pardot導入の効果として、問い合わせフォームや資料ダウンロードページでプログレッシブプロファイリング機能により案件化が向上。この機能は、過去に他のフォームで入力された項目を自動的に補うことで入力の敷居が下がり、離脱を防ぎます。Pardot導入前の2015年と比較すると、2016年は新規リードを1600件獲得し、案件数は約2倍に増大しています。
今後はテレマーケティングの基盤とPardotを連携し、インサイドセールスの強化を目指しています。リードと紐づけられたカスタマージャーニーを構築し、営業、マーケティング、インサイドセールスが一体となったナーチャリング体制を実現していく予定です。
参照:https://www.salesforce.com/jp/customer-success-stories/necmp/
江崎グリコ株式会社の事例
Pardot導入前には、Webサイトから集客するしくみがなく情報発信ができず、顧客からの問合せか、電話にアプローチするのみで、顕在層の顧客にしか接触できない状態でした。Pardot導入ではマーケティングの戦略設計に取り組みました。その後、WEBサイトをリニューアルし、マーケティングオートメーションをスタートしました。
新たにサイト上で資料のダウンロードをする導線を作り、そこで見込み客との接点が生まれ、営業ごとにしていた顧客管理もPardotで行い可視化できるように。
定期的なメール配信と問い合わせへのスムーズな対応を繰り返すことで顧客との関係づくりが行え、WEBから獲得する見込み客が2倍以上に増えました。WEBからの新規の顧客だけでも、売り上げが一桁以上上がっています。
参照:https://www.zenoffice.co.jp/works/glico/
Pardotの口コミ・評判
以下のような口コミからわかるように、Pardotは営業活動の数字に直結する魅力があると言えそうです。
担当の無邪気なぼやき「セミナーのアンケートって集計するのめんどいし、後でインサイドが見返すにしても探しづらいし。。なんかシステムでちょちょっとできないかなぁ、、」
?ぴこーん!
結果、Pardotフォームから直接キャンペーンメンバーにアンケート回答を入れる仕組みができました。超便利。
— 上村篤嗣/ローコード開発でBtoBマーケ改革 (@Kam_ats) July 1, 2020
顧客管理システムと連携して、メールマーケティングを行うならSalesforce社のPardotはアリ。利用人数にもよるけど10万/月以上はするし、機能が多すぎて中小企業では持て余す。
月間新規アドレス追加数は300以下であれば、配配メールなどをおすすめしますね。
両方とも現在進行形で使っての感想です。
— 平岡謙一@マーケティング顧問 (@shizuoka_hira) May 6, 2020
Pardot使い始めた人の感想1
初期設定が営業でもマーケでも無理で
開発部門に頼らないといけない。
結構時間かかってなかなか使えない。
焦らされる?— 竹中龍聖 / オンリーストーリーセールスマネージャー (@dragonsales_os) June 11, 2020
Pardot使い始めた人の感想1
初期設定が営業でもマーケでも無理で
開発部門に頼らないといけない。
結構時間かかってなかなか使えない。
焦らされる?— 竹中龍聖 / オンリーストーリーセールスマネージャー (@dragonsales_os) June 11, 2020
Pardotユーザ会に参加。早速LastActivityから時間を抽出してレポートを作ってみた。
結果は思った以上にアクションをした時間に偏りがあって、やった意味あったなあ。
早速明日展開しよう。— Takumi Morisaki (@TackGt) February 18, 2021
どんな手法もどんな効果あったのか検証すべき。失注商談の掘り起こしはPardotとかMAでフォローするのがベストだと思う。貴重なマンパワーを期待値の低い戦略に投下すべきじゃない。
— ジュンヤ@IT sales (@5jyurali) November 15, 2019
まとめ
BtoB事業のマーケティングにおいて、もはや外せない選択肢となったマーケティングオートメーション(MA)とその代名詞的な存在であるPardot(パードット)について、そのメリット、機能を紹介しました。
CRMにSalesforceを導入しているなら、連携可能なPardotを使うメリットは大きいです。CRMからの顧客情報をMAに連携させることで、効果的な営業・マーケティング活動ができるようになりますのでぜひ活用してみてください。