近年、耳にする機会が増えた「カスタマーサクセス」という言葉。
何となくの意味はわかっても、いまいち理解できていない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、カスタマーサクセスの基本や役割、おすすめツール、活用事例などを紹介します。
「これからカスタマーサクセスに注力したい」「カスタマーサポートとは何が違うの?」とお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
カスタマーサクセスとは
「顧客の成功」を意味するカスタマーサクセスは、自社の利益を追求するうえでも押さえておきたいポイントです。
まずはカスタマーサクセスの意味や注目される理由、カスタマーサポートとの違いを見ていきましょう。
カスタマーサクセスの意味
カスタマーサクセスとは、「顧客の目標達成」を目的として能動的に支援を行うことを言います。
たとえば自社ツールの利用者に対して「このような活用方法がありますよ」「問題解決にはこの機能がおすすめですよ」と働きかけ、ツールの有用性を認識してもらえれば、継続利用やアップセル(上位プランへの乗り換え)につながる可能性が高いです。
ですが導入後のフォローがなくツールを活用できていない状態だと、すぐに解約を検討してしまうでしょう。
カスタマーサクセスは、顧客の課題解決とツールを結びつけることで、結果的に自社の利益へとつなげる取り組みです。
「解約率が高い」「競合との差別化を図りたい」という方は、顧客の成功、ひいては自社の成功のためにもカスタマーサクセスの導入を検討してみるのもよいでしょう。
カスタマーサクセスが注目されるようになった理由
カスタマーサクセスは、2000年代から表面化しだした比較的新しい考え方です。
では、なぜ近年になって注目されるようになってきたのでしょうか。
こちらでは、2つの理由を紹介します。
- サブスクリプション型ビジネスモデルの浸透
- 顧客体験の重視
サブスクリプション型ビジネスモデル(サブスク)とは、いわゆる月額制・定額制サービスのことです。
音楽や動画の聞き放題・見放題、ファッションアイテムや車のレンタル・リースなど多様なジャンルのサブスクがあり、「月額で利用→満足いかなければ解約」という流れも浸透してきました。
そこで重視されるのが「顧客体験」です。
同様のサービスが複数ある中、自社のサービスを継続利用してもらうためには顧客がいかに満足しているかが重要となります。
特に解約率は会社の利益に直結するため、顧客の不満・要望を先回りして解決するカスタマーサクセスは今後注力していきたい取り組みの1つと言えるでしょう。
カスタマーサポートとの違い
カスタマーサクセスと似た言葉に「カスタマーサポート」がありますが、顧客に対しての取り組み方がそれぞれ異なります。
カスタマーサクセス | カスタマーサポート |
・能動的に働きかける (ツールの使い方を提案・勉強会を開催) ・目標に沿って計画的にフォローする | ・受動的に対応する (クレーム・問い合わせ対応など) ・迅速な対応が求められる |
カスタマーサポートは顧客が起点、カスタマーサクセスは自社側からの発信が基本となりますが、どちらも顧客満足度に関わる重要な業務であることは確かです。
ただし、カスタマーサポートの体制が整っていない状態でカスタマーサクセスに取り組むのはやや危険。
たとえば不具合に関する問い合わせを放置したまま新しい提案をしてしまうと、かえって企業への信頼を失ってしまう可能性もあります。
自社のサポートに少しでも不安の残る方は、まずカスタマーサポートについての理解を深め、体制を整えたうえでカスタマーサクセスを導入することをおすすめします。
顧客ステージごとのカスタマーサクセスの役割

カスタマーサクセスの役割は、顧客と接するタイミングによって変わってきます。
こちらでは、顧客ステージごとの役割について説明します。
オンボーディング
オンボーディングとは、自社のツール・サービスについて顧客が理解を深め、使いこなせられるようにするためのサポートです。
- ツールの使用方法の説明
- 機能の紹介
- サポート体制の案内
などが、オンボーディング時におけるカスタマーサクセスの役割となります。
導入支援
機能についての理解が進んだら、導入支援の段階へと移ります。
初期段階でつまずくと早期解約につながってしまうため、勉強会などで
- 顧客のゴールや課題の共有
- 活動計画
などを把握・提案します。
ツール・サービスの活用イメージや目標達成に向けてすべきことが明確になれば、ツールの有用性がさらに伝わるでしょう。
活用促進
導入後の活用促進も、解約につなげないための重要なポイントです。
- 顧客のゴール達成度チェック
- ツールの活用度チェック
- ツールの機能紹介
などを実施し、顧客がよりツールを活用できる状態を目指します。
たとえば企業に直接訪問したりWeb会議で画面共有しながら説明したりなど、さまざまな方法が考えられます。
また、顧客同士が集まる場(=ユーザー会)を設け、ツール理解をさらに深めるきっかけを作るのもよいでしょう。
契約更新
ツール・サービスによって「最低契約期間3ヶ月」「1年ごとの自動更新」など契約更新のルールはさまざまですが、このときにもカスタマーサクセスとしての役割があります。
たとえば契約更新の見積もり作成。
顧客にとってはツールの価値と費用が見合っているのか確認する機会となるため、相手の利益を考えて提案できるとよいでしょう。
ただし契約更新のときだけ連絡するのは信頼を損なう危険性があります。
導入支援や活用促進の段階から関係性の構築に向けて行動し、契約更新につながるように努めましょう。
アップセル・クロスセル
アップセルとは上位プランへの乗り換え、クロスセルとはメインの商品と合わせて異なる商品の購入を促すことを言います。
カスタマーサクセスを行う中で、顧客を成功に導くためには下記のようなアップセル・クロスセルが必要となる場面もあるでしょう。
- 追加機能の提案
- 別ツール活用の提案
これらは顧客単価の増加にもつながり、企業利益に直結します。
ただし、提案するだけでは「売上のためなのでは?」と不信感を抱かせるきっかけにもなりうるので、顧客の課題解決に適しているか吟味したうえで薦めるようにしましょう。
カスタマーサクセスのKPI

KPIとは「Key Performance Indicator(重要業績評価指標)」を略した言葉で、目標までの進捗を数値で示すための指標のことを言います。
カスタマーサクセスにおいては、下記の5つがKPIとして考えられます。
自社に適したKPIを設定し、課題の抽出や業務効率化に役立てましょう。
契約更新数
安定した利益を得るためには契約更新数を維持あるいは増やす必要がありますが、どのくらいの顧客が契約更新を選択したのかをKPIとして設定するのもおすすめです。
契約更新数はそのまま売上の把握へとつながります。
また、顧客がサービスに対して満足しているかどうかを示す指標にもなるため、更新数が少ない場合は改善策を練るなど対策がとれるでしょう。
チャーンレート(解約率)
契約更新数と似た意味合いがありますが、チャーンレート(解約率)も重要なKPIの1つです。
解約率の高さは、顧客満足度の低さに直結します。
新規顧客を獲得するためには大きな労力が必要となるため、解約率を上げないための施策を検討する必要があるでしょう。
また、どのタイミングで解約に至ったかも重要な指標です。
たとえばオンボーディング後の解約率が高い場合は、導入後の定着が促せなかった・ツールへの理解を深められなかったなど原因を深堀りできるので、細かく把握しておくことをおすすめします。
ヘルススコア
ヘルススコアとは、顧客がツール・サービスを利用し続けてくれるかどうかを数値で表したものです。
- ツールの活用度
- 重要機能の活用頻度
- 顧客のゴールへの貢献度
などが一例として挙げられますが、たとえばツールの活用度であればログイン回数や滞在時間などが指標となります。
明らかに利用頻度が減ったときなどにフォローを入れられる体制を作っておけば、解約率の低下にもつなげられるでしょう。
NPS(ネット・プロモーター・スコア)
NPS(ネット・プロモーター・スコア)とは、ツール・サービスへの愛着や信頼度合いを表した数字です。
「家族や友人など身近な人に〇〇をお勧めしたいか」と質問し、0~10の11段階の中から回答してもらうことで数値化します。
NPSは契約の継続や他者への推奨につながる指標であり、収益の予測に活用しやすいです。
アンケートなどを利用すれば数値の取得も難しくないため、現状の把握を目的として利用してみるのもよいでしょう。
アップセル・クロスセル
アップセル・クロスセルがどのくらい発生したかもKPIとして押さえておきたいポイントです。
複数のプランやオプションを用意している場合に指標として活用しやすく、アップセル・クロスセルを狙った施策に注力することで顧客単価の増加にもつながります。
ただし、顧客がアップセル・クロスセルの案内を不要と感じたときには、解約を検討するきっかけにもなりえます。
どの顧客にも同一の対応をするのではなく、1社ごとに適した方針を定めたうえで施策を提案するように心がけましょう。
おすすめのカスタマーサクセスツール
カスタマーサクセスに注力するためには、顧客の目標を把握し、個別最適化されたツール・サービスの活用方法を提案する必要があります。
ですが、「それぞれに適した対応を考えるには時間がいくらあっても足りない…」とお困りの方もいることでしょう。
そういったときにおすすめなのが、カスタマーサクセスに役立つツールの活用です。
こちらでは、4つのジャンルに分けて効果的なツールを紹介しますので、自社の規模に合わせて導入をご検討ください。
カスタマーサクセス管理ツール
まずはカスタマーサクセスに特化した管理ツールを紹介します。
カスタマーサクセスの業務全体を改善したいとお考えの方は、こちらのツールから選択してみるのもよいでしょう。
HiCustomer(ハイカスタマー)

HiCustomer(ハイカスタマー)は、HiCustomer株式会社の提供する国内初のカスタマーサクセス管理ツールです。
ヘルススコアの管理や解約アラートなど、カスタマーサクセス向けの機能が豊富に搭載されています。
2018年に正式版がリリースされたばかりですが、月次解約率を2%から0.1%に削減、1人あたりの担当顧客数が2倍などHiCustomer導入後の効果を実感している企業が多いのも特徴。
導入サポートも充実しているので、カスタマーサクセスチームを立ち上げたい企業におすすめです。
<利用料金>
要問い合わせ
Gainsight(ゲインサイト)

Gainsight(ゲインサイト)は、アメリカに本社を構えるGainsight社が開発したカスタマーサクセスツールです。
SalesforceやBoxなどアメリカを中心に多くの企業に導入され、顧客との関係構築に役立てられています。
Gainsightには顧客管理や分析に効果的な機能が搭載されており、優先的に対応すべき顧客をデータに基づいて抽出。
顧客の状況がを可視化できるため、チーム全体でカスタマーサクセスに取り組めます。
<利用料金>
要問い合わせ
問い合わせ対応・管理を効率化するツール
問い合わせ対応や管理を効率化できるツールもカスタマーサクセスにおすすめです。
顧客とのやりとりや対応状況を一元管理できるため、作業にかかる工数を削減できます。
formrun(フォームラン)
-1.png)
formrun(フォームラン)は、弊社の提供するフォーム作成ツールです。
フォームへの回答をカード化して一覧表示できるため、問い合わせ管理ツールとしても活用できます。
また、顧客の対応状況をカンバン方式で管理することで、【対応中】【アップセル検討中】【解約済み】など視覚的に把握することも可能。
問い合わせがあればSlackやチャットワークなどのチャットツールに通知が飛ぶように設定できるため、迅速な対応も実現できます。
<利用料金>
FREE | BEGNNER | STARTER | PROFESSIONAL | |
月額料金 | 0円 | 3,880円 | 12,980円 | 25,800円 |
※14日間の無料トライアルあり
zendesk(ゼンデスク)

zendesk(ゼンデスク)は、アメリカの企業が提供する顧客関係管理システムです。
カスタマサポート用のソフトウェア「zendesk support」を用意しており、顧客対応の迅速化やよくある質問の作成などに活用できます。
また、レポート機能も搭載しており、顧客満足度やNPSの調査も可能。
お問い合わせ数や回答までの時間も可視化できるため、改善すべき点も見つけやすいです。
<zendesk supportの利用料金>
Essential | Team | Professional | Enterprise | Elite | |
月額料金 ※1人あたり | 5ドル | 19ドル | 49ドル | 99ドル | 199ドル |
※Professionalプランを利用できる無料トライアルあり
チャネルトーク

チャネルトークは、株式会社ゾイコーポレーションの提供するコミュニケーションツールです。
toB、toCなどビジネスの形態に関係なく利用でき、25,000社以上に導入されています。
チャネルトークは自社のサイトにチャットを設置でき、顧客との接点を増やせます。
ビジネスチャットツール機能もあるため、顧客の声をそのまま社内に共有できるのもチャネルトークの特徴です。
<利用料金>
- 1日の訪問者数100人以下:無料
- 1日の訪問者数が100人~:人数によって変動(例:1,000人の場合は月額3,000~4,500円)
コミュニティ管理ツール
コミュニティ管理ツールは、ツール・サービスを利用する顧客同士のコミュニケーションを活性化させるツールです。
FacebookなどのSNSでもコミュニティは形成できていましたが、管理体制の改善や顧客満足度の向上などを目的として、さまざまなコミュニティ管理ツールが利用されています。
commmune(コミューン)

commmune(コミューン)は、コミューン株式会社の開発したコミュニティマーケティングツールです。
顧客と気軽にやりとりできる場をオンライン上に設け、コミュニケーションの活性化を図ることで、契約継続率や企業への愛着度を高めます。
また、導入や運用をスムーズに進めるためのサポートもあり、「ユーザーコミュニティを構築したい」とお考えの方に適した機能が充実。
顧客同士のやりとりから改善点を発掘できたり、オフラインイベントと連動させたりなど、さまざまな活用が期待できます。
<利用料金>
要問い合わせ
coorum(コーラム)

coorum(コーラム)は、株式会社Asobicaの提供するコミュニティ管理ツールです。
マネーフォワードやリクルートなど多様な業種に導入され、顧客満足度の向上や顧客対応にかかるコスト削減などを実現しています。
プランはコミュニティの規模や目標、機能に応じて「ライトプラン」「スタンダードプラン」「プレミアムプラン」から選択可能。
コミュニティの管理だけでなく既存顧客の分析機能も搭載しており、解約率の低下や課題の抽出にも活用できます。
<利用料金>
要問い合わせ
NPS計測ツール
カスタマーサクセスのKPIとして挙げられる「NPS」。
アンケートツールなどでも手軽に計測できますが、なかには顧客管理の一環としてNPSの機能を設けているツールもあります。
Ambassador Relations Tool

Ambassador Relations Toolは、株式会社コンファクトリーが提供している多用途ツールです。
NPSの計測だけでなく、MA(マーケティングオートメーション)・CRM・メール配信としても活用できます。
顧客総数1万人までであれば初期費用・月額ともに無料で利用でき、ECサイトや小売業、飲食業など幅広い業種で導入されています。
また、顧客分析機能を用いて顧客のランク分けもできるため、離反顧客(サービス利用を辞める顧客)や休眠顧客(長期間の利用がない顧客)の抽出にも役立ちます。
<利用料金>
フリープラン | クラウドプラン | クラウドBプラン | サーバ設置プラン | |
月額料金 | 無料 | 26,800円 | 100,000円 | 個別見積もり |
EmotionTech(エモーションテック)

https://www.emotion-tech.co.jp/service
EmotionTech(エモーションテック)は、株式会社Emotion Techの開発した顧客体験マネジメントクラウドです。
NPSを含めたアンケート機能や回答結果のリアルタイム分析機能、回答結果に応じたアラート機能など、さまざまな機能が搭載されています。
特に分析機能では年齢や性別など顧客属性ごとにロイヤルティ(愛着度)を算出することも可能。
どの顧客層が特に愛着を持ちやすいのか把握することで、今後の施策展開にも活かせます。
<利用料金>
要問い合わせ
カスタマーサクセスの実践事例
メリットの多いカスタマーサクセスですが、方針などを定めないままに導入しても円滑に進まない可能性があります。
他社の実践事例も確認し、どのような活用方法があるのか確認していきましょう。
セールスフォース・ドットコム
2005年頃に日本でいち早くカスタマーサクセスの部署を立ち上げたセールスフォース・ドットコム。
サブスクリプション型のビジネスモデルであることから、サービスの継続利用を目的に設立されました。
セールスフォースでは、顧客の課題とゴールを明確にする、定着化に向けた運用ルールを策定するなどの取り組みを実施。
ツールへのログイン率やレポート参照率など、「数値が低い=解約につながる」ポイントを中心にチェックし、適宜フォローを行っています。
参考:カスタマーサクセスとは何か? | セールスフォース・ドットコム
SmartHR
SmartHRは、サービス利用継続率99.5%を誇る労務管理システムです。
2万社以上が導入しているサービスですが、カスタマーサクセスにも注力していることで継続率は高水準を維持しています。
SmartHRはユーザーの利用状況を「オンボーディング期」「活用/定着期」「更新期」の3つに分割。
一方、カスタマーサクセスはチームを細分化し、各チームが顧客の状況や規模に応じて対応を行います。
また、年末調整を行う前に顧客に連絡するなど、適したタイミングを押さえることで解約率の低下に努めています。
参考: 【代打ブログ】SmartHRのカスタマーサクセスが2018年にやったことまとめ | 宮田昇始のブログ
参考: 成長SaaS企業のカスタマーサクセスづくり | Coral Capital
Sansan
Sansanは、Sansan株式会社の提供する法人向けクラウド名刺管理サービスです。
名刺管理サービスとして80%以上のシェアを誇り、6,000社もの企業に導入されています。
同社は運用支援サービスとして「カスタマーサクセスプラン」を設け、導入・定着・活用のそれぞれの段階に応じたサポートを用意。
名刺取込サービスや活用方法のレクチャー、電話でのサポート、交流会の開催など、さまざまな面でフォローを行えるように体制を整えています。
また、オンラインコミュニティではユーザー同士の情報交換も可能。
ユーザーが質問やアイデアを出し合うことで、コミュニケーションの活性化も図れます。
まとめ:カスタマーサクセスの前にすべきことを確認しよう
カスタマーサクセスを行ううえで重視したいのは「サービス・ツールを通して顧客にどうなってもらいたいか」という視点です。
顧客の現状・課題をきちんと把握し、的確な提案ができれば、満足度や信頼感も高まるでしょう。
ただし、自社のツールがいかに貢献できるものであっても、相手にとって押しつけがましく感じられたら失敗につながる可能性もあります。
これからカスタマーサクセスを立ち上げたい方、既存のカスタマーサクセスチームを改良したい方は、相手の状況をしっかり見極め、顧客理解を深めながらカスタマーサクセスに取り組んでみてください。