【スタートアップ必見】ドッグフーディングによるサービス改善のすすめ

マーケティング

「どうすれば自社製品やサービスが売れるのか」と日々模索している企業は多いでしょう。

製品やサービスは一度販売してしまえば終わりではなく、利用者がより快適に使えるように日々の改良が求められます。
そのために有効な手段の1つが「ドッグフーディング」です。

では、そもそもドッグフーディングとは何か、実施にどんなメリットがあるのか、またどんな実施事例があるのかなどを紹介していきます。
売上にお悩みの方やスタートアップの方は、ぜひご参考ください。

ドッグフーディングとは?

ドッグフーディングはサービス改善策の1つですが、中にはピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。

すでに自社製品やサービスを展開している企業はもちろん、これから本格的に事業を始めるスタートアップの企業にとっても、ドッグフーディングには多くのメリットがあります。

「ドッグフーディングってどういう意味?」「どうやって実施すれば良いの?」という方のために、ドッグフーディングの基本的な意味から実施のメリット、事例などを紹介ます。

ドッグフーディングの意味と由来

ドッグフーディング(Dogfooding)とは、自社製品・サービスを社員が日常的に利用し改善に役立てること、あるいは正式リリースの前の製品・サービスを社内テストで利用することです。

ドッグフードの販売を手がける企業の社員が、実際にドッグフードを食べていたというエピソードが語源と言われています。

Microsoft、Google、トヨタ自動車などの大企業も実践していますが、ドッグフーディングを行うことにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

ドッグフーディングのメリット

ドッグフーディングの実施には、主に以下のメリットが挙げられます。

  • ユーザー目線で利用することで改善点が見つかる
  • 遠慮のない率直な意見が得られる
  • 正式リリース前の社内テストであれば、多少の失敗もできる
  • 自社製品・サービスへの愛着が湧く

それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

ユーザー目線で利用することで改善点が見つかる

製品・サービスの開発側にとって、「自分たちの製品やサービスがどのように使われるのか」ということは意外に把握できていないことがあります。
利用して初めて「こんなことができない」「ここが不便だ」という発見に至ることも多いのです。

開発側の立場から利用者側の立場になることで、そうした改善点を炙り出すことができるのがドッグフーディングです。

またスタートアップの企業であれば、創業者が開発者を兼ねていたり、開発者と創業者の距離が近かったりする場合も多いです。
創業者が積極的にドッグフーディングを実施することで重要性を理解することにもつながります。

遠慮のない率直な意見が得られる

利用者(顧客やユーザー)の中には、フィードバックを求めても遠慮が生じて本音を引き出せないこともあります。

一方、自社の社員であれば率直な感想を言いやすい立場にあるため、よりリアルなフィードバックを得られるのもドッグフーディングのメリットです。

また社内の人間であれば、社外に出て顧客やユーザーに試してもらうまでもなく、すぐに製品・サービスのヒアリングが実施できるのも利点です。

正式リリース前の社内テストであれば、多少の失敗もできる

製品やサービスに多少の粗があっても、リリース前のテスト段階(ドッグフーディングの段階)で発見できれば大事にならず済みます。

正式にリリースしてからユーザーの声を聞いて改善を図ることもありますが、場合によっては利用者が被害を受けるような重大な欠点が見つかる恐れもあります。
そうしたリスクを減らす役割をドッグフーディングが担っています。

またスタートアップの企業には、1つの施策をじっくり進めるよりも、複数の施策を次々試すスピードが求められます。
施策にいくらか不備があっても、ドッグフーディングであれば公に出ることもないため遠慮なく施策を試すことができます。

自社製品・サービスへの愛着が湧く

自社製品やサービスを利用することで、製品やサービスへの愛着が湧いてくるのもドッグフーディングの嬉しい効果です。

製品・サービスの提供にあたって、提供側自身が製品やサービスを好きであることは大切です。
自分が嫌いなものよりも好きなものを売るほうが、より相手にそのものの魅力をアピールしたくなるからです。

自社製品・サービスへ愛着を持つことは、最終的には利用者に製品・サービスへの愛着を湧かせることにもつながります。

ドッグフーディングの注意点

ドッグフーディングには多くのメリットがある一方、実施にあたっては注意点もあります。

製品・サービスの開発側は、仕様や使い勝手をある程度把握しているため「製品・サービスを使ったことがない」「使うにあたって必要な知識やスキルがない」利用者の視点を忘れがちです。

「初心者でも使いやすいか」「専門知識やスキルがなくても操作できるか」という視点を常に持つことが、ドッグフーディング実施に重要です。

また、ドッグフーディングで集まった意見は必ずしも正しいとは限りません。
あくまで社内の意見であり、実際に外部の人間、つまり顧客やユーザーが同じ考えを持つかは分からないのです。

ドッグフーディングで得られたフィードバックにばかり頼っていると、製品・サービスに対する間違ったイメージを構築してしまう恐れもあることを理解しておく必要があります。

ドッグフーディングを行なっている主な企業

MicrosoftやGoogleなど、世界の大企業も実施しているドッグフーディング。
数多くのファンを抱える企業がどのようなドッグフーディングに取り組んでいるのか、最後に有名企業の実施事例を紹介します。

Microsoft

ソフトウェアの開発・販売において知らない人はいないであろうMicrosoft(マイクロソフト)。
実は、ドッグフーディングが注目を集め始めたきっかけはMicrosoftであるとも言われています。
Microsoftの公式サイトによると、

かつては今ほど開発の早い段階でドッグフーディングを行ってはいなかったが、早期のドッグフーディングによって開発バグを早いうちに発見できる。機能が固まってからバグは見つかっては遅いため、機能が固まる前に調整が加えられるよう、早期からドッグフーディングに取り組むようにした。

参照:https://blogs.msdn.microsoft.com/vbteamjp/2008/06/10/matt-gertz-2/
※上記記事の内容を一部改変

というふうに、ドッグフーディングの重要性について触れています。
世界中のユーザーに使われるソフトウェアの開発の裏には、日々のドッグフーディングによる改良の積み重ねがあると考えられます。

Google

インターネット関連サービスにおいて世界で莫大なシェアを占めるGoogle。
Googleもまた、公式サイト内でドッグフーディングの重要性を述べています。

ドッグフードはテスト段階における重要な作業である。テストチームではドックフード実施前に問題点を見つけるべく最善を尽くすが、それでも完璧でないことがあるため、テスト段階でカバーできなかった問題点をドッグフードで拾い上げる。製品の品質や使いやすさについて多くの意見が寄せられ、それを製品設計に活かす。リリース前に製品に関するフィードバックが得られるのは本当にありがたいことである。

参照:https://testing.googleblog.com/2014/01/the-google-test-and-development.html
※上記記事の内容を一部改変

テストを実施しても、どうしても見つけきれないミスは存在します。
そうした見落としを拾い上げ、製品の改善に活かせるのがドッグフーディングの利点です。

世界中のユーザーに愛されるサービスは、そうした重なる改良の末に生み出されているのでしょう。

Amazon.com

誰もが一度は耳にしたことがある、ECサイト・Webサービス会社のAmazon(Amazon.com, Inc.)。
Amazonの共同創設者でありCEOを務めるジェフ・ベゾス氏は、ドッグフーディングに関して2002年に下記の事柄を定めています。

  • すべてのチームは今後、サービスインターフェイスを通じてデータと機能を公開する
  • チームはこれらのインタフェースを介して互いに意見交換をする必要がある
  • 他の形式のプロセス間通信は許可されない
  • HTTPやCorbaなど、どの技術を使っても良い
  • すべてのサービスインタフェースは例外なく、外部化できるようにゼロから設計しなくてはならない。チームはインターフェイスを外部の開発者に公開できるように計画および設計する必要がある

参照:https://homepages.dcc.ufmg.br/~mtov/pmcc/modularization.pdf
※上記資料の内容を一部改変

これらのことを守らないものは解雇するとまで定めているほどです。
サービスインターフェースの質を高めるため、ドッグフーディングのプロセスがいかに重視されているか分かります。

Airbnb

宿泊施設の予約や民宿の貸し出しサービスを行っているAirbnb、その共同創設者であるジョー・ゲビア氏は、英文ビジネス誌 「FORTUNE(フォーチュン)」との対談でドッグフーディングについて言及しています。

ドッグフーディングは、顧客に提供するサービスを社員自身が内側から理解することだ。ドッグフーディングは有用な情報や理解を得るための方法の1つでもある。実施することでサービスの改善点が見つかるし、実施のためにすべての社員の出張費だって払うのもいとわない。ドッグフーディングを行うことで、「検索しているときにバグを見つけた」「Airbnbの中でこんな情報がほしい」という声が集まってくる。

参照:http://fortune.com/2017/12/22/airbnb-joe-gebbia/
※上記記事の内容を一部改変

リーダー自らがドッグフーディングの重要性を説き、社員に実施を推奨しています。
ドッグフーディングを行った社員の多くがフィードバックを持ち帰り、そうした社員の声をサービス改善に活かしているようです。

トヨタ自動車

日本の大手自動車メーカーであるトヨタ自動車株式会社、そのトップである豊田章男社長はドッグフーディングを自ら実践しています。

あるドキュメンタリー番組のゲストとして登場した豊田氏は、番組の中でトヨタの車を運転するシーンを多く見せており、またインタビューに対しても、

「所用でもしばしばトヨタの車を運転する」
「自分の企業の製品を使わないのはマズイ」
「車に乗るのかとよく聞かれるが、『何を言っているんだ』と聞き返したくなる」

引用元:https://popinsight.jp/blog/?p=155

などと返しています。
自社の車の発売前には自らハンドルを握って試乗するなど、社長が積極的に自社製品を使っていく姿勢から、トヨタ自動車が大手企業にまで成長した理由が垣間見えるのではないでしょうか。

まとめ:ドッグフーディングでサービス向上を目指そう!

ドッグフーディングは、製品やサービスの改善から最終的には顧客ロイヤリティを高めることにもつながります。

顧客やユーザー目線で自社製品・サービスを体験することで、顧客やユーザーが製品・サービスに対して何を感じているのか、どうすれば製品・サービスを使ってくれるか、好きになってくれるかと考えます。
こうしたプロセスが、最終的には顧客ロイヤリティの向上に貢献するのです。

ドッグフーディングは、単なる製品・サービス改善以上の効果が期待できます。
自社製品・サービスの売上に伸び悩む方も、これから製品・サービスの開発を行う方も、ぜひドッグフーディングに取り組んでみてはいかがでしょうか。